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【パーソナリティ】 名前:佐倉志帆 性別:女性 年齢:10歳 【能力値】 戦闘:1 情報:3+1 運動:1 調教:1 奉仕:2 誘惑:1 体力:1 魔力:2 自尊:2 HP:5 MP:10 PP:10 【アイテム】 衣服 装甲+1。普通の衣服。余り動きを妨げず動きやすい。 眼鏡 情報+1。割とお気に入りのメガネ。 【設定】 ちょっと強気でしっかりものの小学5年生。誕生日は2月16日。 ぽやぽやしている姉のことが心配で仕方がない。 性的なことには割と興味があり、国語辞典でやらしい言葉を調べて悶々としたり、 お風呂場の鏡で自分の体を観察したり、触れてみたり。そんな普通の女の子。
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「………!?」 腕をおろした光は唖然した。 槍は僕の影でなく、すぐそこのハエに刺さっていた。 「(ど…動物殺し…)」 この状態を影から見てた暗はそう思った。 ズボッ 「なーんちゃってね♪テヘ」 「「(殺した時点でテヘはないだろ)」」 と心で突っ込む2人。 「でもなんか気配がこれじゃない気がするわ。もうちょっと…虫ほどじゃない大きななにかが…」 「…へぇ」 光はそれぐらいしか言えなかった。 「…ま、虫殺しはここまでとして光、風呂に入りなさい」 「…うん」 光はそう頷き、風呂場へ行った。 ~風呂場~ シャアアアァァァァァ… 光はシャワーで頭を洗っていた。 暗はまだ影の中にいる。 「…あなたの姉は見かけによらず相当とんでもないことするようだな」 「…うん。あの笑顔とは裏腹におかしなことやるんだ」 「……」 ユラァ… 影から出てくる暗。 「人間とはそこまでかわってるのか」 「……」 じっと暗をみる光。 「訊きたいことあるんだけどいい…?」 「なんだ?」 「お前って…男?」 「性別は分からない」 この答えに… 「…ちょっと風呂場から出てってくれや」 グイグイグイ… 「な…なにをする」 光は手で暗の背中を押して風呂場から出そうとする。 バタン ドアを閉めた。 「な…何だったんだ……?」 「こんなのもし絵で表現したらある意味エロくなりそうだからなー…」 湯につかりながらそう小さく呟く光であった…。 ~光町高等学校 購買部~ 「俺焼きそばパン!」 「あたしカツサンドイッチ!」 「カ○ピスくれ!」 「カレーパンくれよー!」 購買部はまるで主婦の洋服半額バーゲンのように争っていた。 「うぐっ…例えが…僕ら…が…んぐっ…おばさんみたいだ…あぁっ…」 ↑も購買バーゲンに参加中です 「う~…よいしょっと!」 やっと買えたようだ。 買ったのはカレーパンと卵サンドイッチ。 一応どっちかは暗にあげるつもりである。 「お帰り」 先に焼きそばパンを手に入れた真琴がそう言う。 「何その同情心ない言い方は…」 「男はこーゆー混雑に慣れてないのかしら?」 上から目線な言い方だ。 「…悪かったな」 「とりあえず屋上で食べる?」 「…何でお前と二人きりになんなきゃいけないんだよ…」 「(´・ω・*)」 「何その顔」 「(いてて…踏まれっぱなしで大変だぞ…光)」 暗は光の影なのかにいてたくさんの生徒の足に踏まれたらしい。 ~屋上~ ハクッ 「んん…」 網によっかかって卵サンドイッチを食べる光。 「あのさ…」 「な…なに?」 いきなり真琴にかけられて少し戸惑う。 「あたしって…女の子っぽくないよね……?」 「は…?」 急な質問にそれしか言えない。 「なんでそれ訊くの?」 「だってあたしって力持ちだし、こんな口調だし…運動神経抜群だから…」 おい、最後のはなんだ。自慢か? 「だからさ、こんなのがあたしでいいかなって…」 僕は正直何も言えなかった…。 何か言おうにもなぜか素直に言えない……。 そんなことって…。 「……いやーねぇ!こーんな話するなんてあたしどうかしてるわ。アハハハハハハ…」 真琴は膝をつき、笑いながら地面をたたく。 「(嫌な予感が…)」 そして… バシッ! 「イデッ!!」 ユラッ…… 影から暗が出てきてしまった……。 「…………………………」 真琴はしばらくの沈黙でじっと暗を見つめた…。そして…… 「イヤアアアアァァァァアアアァァァァ!!!!!!」
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963 名前: カタカナ ◆iqP3HuSAqU 投稿日: 2006/08/31(木) 20 22 43.81 ID l5KWbqUi0 翌日。月曜日。朝。 ヒカル「おはよ」 カオル「あ、おはよう」 教室に入ると、先に来ていたカオルが何かをやっていた。宿題みたいだ。 ヒカル「宿題なんてあったっけ?」 カオル「うん、数学の問題集。授業中に終わらなかったから」 ヒカル「あ、そっか。そう言えばそうだった」 カオル「ヒカルは終わってるの?」 ヒカル「10000光年は前に終わらせたね」 カオル「…………すごいね」 ヒカル「まあな」 カオル「……それにしても違和感ないよね。むしろなさすぎて情けなくない?」 ヒカル「確かに。女男とかからかわれても文句は言えなかったかも」 カオル「ヒカルはかわいいからね」 ヒカル「カオルのほうがかわいいって」 カオル「ホント?」 ヒカル「ホントだよ」 カオル「ありがとう」 ??「朝っぱらからウザいぞバカップル」 自覚していても他人にバカップルと言われるのは腹が立つ。 ヒカル「なんだよバカ殿のくせに」 カオル「ダメだよそんなこと言っちゃ。彼女がいないからひがんでるとかっ」 ヒカル「あ、そっか。ワリィ」 ??「ちげーよ!!」 964 名前: カタカナ ◆iqP3HuSAqU 投稿日: 2006/08/31(木) 20 23 59.97 ID l5KWbqUi0 さっきから話しかけてくるコイツはタマキ。同中の友達だ。あだ名は殿。 ちなみにオレとカオルの二人は常陸院って呼ばれたりする。ま、そう呼ぶのは女子だけだが。 ヒカル「じゃあ彼女出来たのか?」 タマキ「出来てねーけどさ……」 ヒカル「……ま、元気出せや、にーちゃん」 タマキ「いや、そんなに落ち込んでねーし」 カオル「女なんて星の数ほどいるとかっ」 ヒカル「まあ男も同じくらいいるんだけどな」 タマキ「励ましてんの? バカにしてんの?」 カオル「どっちかって言うとバカにしてる?」 ヒカル「実際バカだしなw」 タマキ「お前ら…………」 ヒカル「タマキさん、キレてるんですか?」 タマキ「キレてないっすよ」 ホント、バカで扱いやすくてありがたい。 ヒカル「お前は数学の宿題やったの?」 タマキ「…………ナニソレ、うまいの?」 カオル「まずいよ。特に黒鉛ついた所がまずいよ」 ヒカル「……ってかカオル食ったことあんのかよっ!?」 カオル「小学校の頃にやった漢字ドリルとかっ」 タマキ「まずいのか…………じゃあ遠慮しとくわ」 ヒカル「宿題は食いもんじゃねえ!!」 カオル「おっ、名言だね」 タマキ「……カッコイイな」 ヒカル「名言じゃねえ……ただの常識だ」 カオル「また名言?」 ヒカル「もうどうにでもなれ」 965 名前: カタカナ ◆iqP3HuSAqU 投稿日: 2006/08/31(木) 20 26 17.75 ID l5KWbqUi0 なんだかんだで放課後。 ヒカル「バレないもんだな」 カオル「そうだね」 ヒカル「何か拍子抜けした」 カオル「うん、でも良かったよ、バレなくて」 ヒカル「まあな」 カオル「バレてたら今ごろ大変だったよ」 ヒカル「パニックか?」 カオル「そんな表沙汰にはならないよ」 ヒカル「表沙汰にはならないって?」 カオル「男友達にバレてしまったヒカル。放課後体育館裏に呼び出される。 『バラされたくないなら一発ヤらせろよ』『ゃだぁっ!?』。 嫌がり、必死で抵抗するヒカル。しかし、男の腕力には敵わない。 『よし、出すぞ』『ぁっ、ダメェ…………ぁあんっ』。 頭では拒絶しても、身体では求めてしまうヒカル。次第に理性は失われ、快感に溺れ、淫乱になっていく。 『もっと……もっとぉ!』…………」 ヒカル「…………」 カオル「二人は来る日も来る日も情事を続ける。そう、それは二人だけの秘密。決して表には出ない秘密……」 ヒカル「…………とりあえずさ、女の子がそういうこと言っちゃダメだよ」 カオル「……『ヤらせろ』って言うのに『言うな』なの?」 ヒカル「いや、オレは言ったことないし……」 カオル「……じゃあ『私を犯してっ』だったっけ?」 ヒカル「女になったの昨日からだし……」 カオル「……まあどうでもいいか」 ヒカル「良くないし…………ってか彼氏を男に犯させるなよ!」 カオル「……男と女には何があるかわからないとかっ」 ヒカル「わかってよ、ってかオレ、カンペキに女扱いなんだね……」 カオル「……やおい派だった?」 ヒカル「違うっ!!」 967 名前: カタカナ ◆iqP3HuSAqU 投稿日: 2006/08/31(木) 20 27 39.45 ID l5KWbqUi0 ヒカル「……もういい、その話はこっちに置いといて」 カオル「それを持ってきて」 ヒカル「バレても男となんかヤるわけないだろっ!……って違うっ!!」 カオル「ヒカルっておもしろいねー」 ヒカル「だぁーもう、部活どうするっ!?」 カオル「怒鳴んないでよ……」 ヒカル「あ、ゴメン。……で、どうする?」 カオル「行こうよ」 ヒカル「うん、まあ良いけどさ」 カオル「バレないかハラハラするのも楽しいし、バレたらバレたでおもしろいしね」 ヒカル「…………」 カオル「何か文句ある?」 ヒカル「別に。ただ、バレることはないだろうなって」 カオル「……じゃあバラそっか?」 ヒカル「いや、それは困る」 カオル「なら『ぁっ、ご主人様、やめっ、ん……くださいっ///』って感情込めて言って」 ヒカル「…………あ、ご主人様、やめ、てください///」 カオル「ダメ、感情がこもってない」 ヒカル「……何て言えばいいんだっけ?」 カオル「『ぁっ、ご主人様、ダメッ、ん……やっ……らめぇえええ///』」 ヒカル「……何かおかしいし、さっきと変わってない?」 カオル「文句言わない。バラされたいの? マワされたいの?」 ヒカル「いや、バラさないでください。ってかそのマワすって言うのは?」 カオル「漢字で書くと『輪姦されたいの?』とかっ」 ヒカル「……………………ぁっ、ご主人様、ダメッ、ん……やっ……らめぇえええ///」 カオル「…………///」 ヒカル「え、まだダメなの?」 カオル「……はうー、おっ持ち帰りぃー!」 ヒカル「ぉわっ!?」 968 名前: カタカナ ◆iqP3HuSAqU 投稿日: 2006/08/31(木) 20 29 17.20 ID l5KWbqUi0 カオル「ヒカル、すっごいえっちな声出すね」 ヒカル「カ、カオルが言わせたんだろっ///」 カオル「そうだけどさ、思わず理性が飛んじゃったよ。てへっ☆」 ヒカル「…………彼氏として、とても不安になる発言なんですが」 カオル「大丈夫。ヒカル以外の男には発情しないから」 ヒカル「……女には?」 カオル「…………出来るだけガンバるよ」 ヒカル「そう……」 すっげー不安だ。なんでカオルのこと好きになっちゃったんだろう。 …………まあかわいいからだよな。 ヒカル「ところでさ、なんか昨日から態度が違くない?」 カオル「ヒカルが女の子になって、タガが外れちゃったみたい。てへっ☆」 ヒカル「てへっ☆、じゃないよ……」 カオル「やっぱり部活行かないで保健室貸し切ろっか?」 ヒカル「……そういう発想しかないの?」 カオル「カオルは、ヒカルの前ではメス犬になっちゃうのです」 ヒカル「……せめて男の時に言われたかったよ」 カオル「ヒカルが男の子の時は別に発情しないよ」 ヒカル「…………それはそれは」 カオル「そんなことより早く部活行こっ」 ヒカル「そだね」
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45 : 魔法少女(アラバマ州):2007/04/03(火) 12 31 34.50 ID 2V4DaXEm0 「君は、今現在の自分の“名字”をしってるか?」 名字、そう言えばこの名前になってはや一ヶ月。自分の名字なんて考えたことなかった 「昔の名字……なわけないから、貴方の名字?」 「まさか」 一言で完全否定 ま、そうですよね。普通に 「病院生活、覚えてる?」 「ばかにしてるんですか?なにも忘れてないって言ったじゃないですか」 「ふぅん。ならいいけど」 人を小馬鹿にしたような台詞 「じゃ、これ読んでみなさい」 にやにやしながら手渡された一枚の紙 「これは?」 「まぁ読みなさいって」 どうやら住民票、らしい 「……この名字、院長先生の?」 そう、この紙に記されている名前は私が言ったその名前と、院長先生の、つまり病院名といっしょ 「どうして?」 「それくらいは自分で考えないと、っていいたところだが、まぁもう少ししたら話すさ」 「……いじわる」 「死にたがりやさんにはいい延命材料だと思わないか?」 いつまでもにやにやと唇の端を持ち上げ続ける彼 「……院長先生は悲しんでくれるんでしょう?一人でもいるなら死にたがりませんよ」 嘘だね。彼の口はわずかに動く 「そんな簡単に生きようと思えるくらいなら初めっから死ぬなんて言わないさ」 それは確かに、そうだと思う 自分の言葉が自分でも信じられないくらい、戯れ言、虚実だ 「というわけで死にたがりやさんのために更に薬を処方しないといけないね」 彼はまた、新しい紙を取り出した 46 : 魔法少女(アラバマ州):2007/04/03(火) 12 32 54.40 ID 2V4DaXEm0 「今度はなに?」 「君は自分から行動することを覚えた方がいい」 定型的な言葉にもイヤミに絡んでくる 「……読みますよぉ」 紙といっても数枚の束で、なにやら難しいことがぎっしりと書かれている ただ、幾つかの文字を抜粋して読めば、この紙全てが私のことだとわかった 「君は不思議に思わなかったのか?」 読み馴れない大量の文章と格闘する私には答える余裕はない そもそもこの質問はどの不思議のことを指しているかも分からないのでとりあえずは聞き流す 「ふー。ま、こっちで勝手に喋るけどね」 本気、真剣に紙を睨み続ける私の解答を待たずに彼は語りはじめた 「まず、君は交通事故に合ったわけだけど、どのくらいの怪我だったか知ってるかな」 ー私は知らない 「怪我そのものはそんなに酷くはなかったけど、幾つかの問題が合った」 ー………… 「その一つが、車との接触ではあり得ない外傷の数々。そして、戻らない意識」 ーこの紙はそれを告げるためにおよそ一ページを要している 「これはなにか今までの生活に大きな問題が合ったのではないかと、医者達は考えたそうだ」 どうやら、紙とにらめっこを続けるよりも、彼と話した方がより理解は深まるそうだ 「で、どうしたの?」 資料を机の上にバサと投げ出した私を見て、やれやれ、と首を小さく振り 散らばった紙を集めて、また茶封筒へと戻す 「君の正体はそこで全部分かってたってことさ」 衝撃の事実ではある それでも、心を動かすほど、今の私にとっては大きい問題ではなかったケド 47 : 魔法少女(アラバマ州):2007/04/03(火) 12 34 21.35 ID 2V4DaXEm0 あんまり驚かないんだ、彼の目は多分そう言っている 「そこで、君のご両親から、院長先生は親権を譲り受けたわけだけど……」 ここで、ちらと私の顔色をみる 「別に……あんなやつら、もう私と関係ないんでしょ?それでいいです」 強がって、話を続けるように促すけれど、何処か寂しい 確かに院長先生が私の父親で、私を家族としてみてくれているのは嬉しい でも、本当の親じゃなくって、本当の親は私を見捨てたことがよりはっきりとした、と言うのは心苦しい 「この話は、延命用処方箋にはならないから言いづらいけど『彼女が幸せなら別に私のことを知る必要もない』って」 この人は私の心を見抜いているのか、それとも、本当は鈍感なのか 「ま、君も事実を知ったんだ。お父さんといってあげたらきっと喜ぶと思うよ?」 「そう、ですか」 「まぁこの話は今度にするとして、続きにいくとしよう」 彼は、今度は私の顔も見ないで、答えも待たずに話を続けた 「君がなかなか目を覚まさない中で、今度は内面的な意味で新しい問題が出てきた」 「問題?」 「君は外見上は男だけど、男として育ってきたけれど、実際はどっちでもあったって話 君のお腹の傷は、半陰陽だった君を正式に女の子にするための手術ってこと」 「じゃあ、私は本当に、本当の本当に女で、男になるとか、戻るとかそういうことは」 「ない。まぁ君の心配事かは知らないけど、そのうちに赤ちゃんも産めるらしいさ」 「でも、どうして?」 「男として暮らしてきて、辛いことがあったから、女として新しい人生を歩ませてあげたい、とのことだ」 そうか、新しい人生を私は確かに歩いていたんだね 48 : 魔法少女(アラバマ州):2007/04/03(火) 12 37 28.87 ID 2V4DaXEm0 「でも、私の新しい人生も失敗しちゃったんだね」 本当に私は不幸な星の下に産まれたのかもしれない 「あーあ、もっと早く知ってれば、もっと楽しくすごせたのかもしれないのになぁ」 悔しさ、というよりも、あきらめ、かな? 涙は流れているけど、笑って、作り物じゃなくって心から湧いてくる笑顔 「ねぇ、こんなに汚れてるけどさ。もう一回新しく歩き出せると思う?」 彼の顔を見ても、どうもぼやけてる。それでも、笑っているのはわかる あやふやな視界の中で、彼の手が近づいて、私の涙を拭う 「君は十分魅力的な女の子さ、いくらでもやり直しなんてできる」 「本当に?」 疑心暗鬼な私の性格でも?と聞きたくなるくらい暗いなぁ、私 そんな私を励ますためか、彼はたとえ話を始める 「人生って日記帳みたいだと思わない?」 どうだろう、もうすこし複雑な気が、する 49 : 魔法少女(アラバマ州):2007/04/03(火) 12 39 35.70 ID 2V4DaXEm0 彼は両手で、長方形を作る 「毎日、毎日書いて、記録に残す。それが過去」 空気しかない、親指と人差し指で形作られた四角 「嫌なことも沢山ある。それが続く月もあるかもしれないね」 その何も無い空間を彼はつかんだ 「でも、さ」 彼は私の日記を破く、破いていく 「嫌なら、破けるし、新しい日記帳にかえたっていいじゃない?」 細かくビリビリに破って、ばっと宙へとばらまく ひらひらと舞う、破片は一枚残らず塵と消える 「もし良かったら、俺が新しい日記をプレゼントしよう」 私に向かって伸ばされた手、その手には白い紙が握られている 「さっき君に告白されたように思うけど、アレは君の本心として受け取っていい?」 渡された紙には、彼の名前と私の名前、そして印鑑 「これって……」 「そうそう、君の新しい日記帳の初めのページにこう書いてほしいんだ」 『『嫌なこともあったけれど、私は“彼”といっしょに歩いて生きます』』 こんな私で良かったら 「本当に、本当に……私でいいの?」 私は初めてキスをした 今までと違って、彼をしっかりとうけとめて 終わり
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39 名前: VIP賢者 投稿日: 2006/11/25(土) 14 50 16.94 ID VIEhZTy00 ひょんなことからウズラを拾ってしまった。 とりあえず釣具屋でミルワームを買ってきて与えてみた。 気に入ったようでうれしそうに食っていた。 箱に入れて飼うことにした。 ウ「ごしゅじんサマー! あさだよー。おきてよー!」 男「・・・?」 ウ「あ、おきた。おはよー。」 男「な、なんだお前?」 ウ「なにって、うずらだよ。」 男「・・・は? マジ?」 女の子になっていた。 40 名前: VIP魔法使い 投稿日: 2006/11/25(土) 15 17 04.83 ID VIEhZTy00 男「お前、誰だ?」 ウ「うずらだよ。きのうひろってもらった。」 男「・・・ 名前は?」 ウ「ないよ。だってうずらだもん。」 男「・・・」 ウ「でも、よぶんだったら『あらぶるたか』とかがいいな。」 男「ウズラなのになんで鷹なんだよ。」 ウ「じゃあ『ウズぶるたか』で。」 41 名前: VIP魔法使い 投稿日: 2006/11/25(土) 15 50 58.67 ID VIEhZTy00 腹が減ったが食い物がないので、近所のファミレスに行くことにした。 ウズ子にはとりあえずLサイズのTシャツとサンダルを与えた。 男「何を食べるかな・・・」 ウ「なんでもいいの?」 男「いいぞ。。ええと、俺はカレー、セットで。」 店「カレーセットおひとつ。」 ウ「むしセット!」 男「そんなものは無い!」 ウ「あう~・・・」 男「他に食いたいものは?」 ウ「じゃあ・・・ なっぱ?」 男「ガーデンサラダひとつ。」 店「ガーデンサラダおひとつ。かしこまりました~!」 51 名前: VIP無職 投稿日: 2006/11/25(土) 16 23 48.37 ID VIEhZTy00 ファミレスの帰りに公園に寄ってみた。 ウ「あ! すなだ!すなだーーーー!」 男「!?」 ウ「すなーーーーーーーーーーーー!」 バサバサバサバサ・・・ 男「砂浴びか・・・」 ウ「さっぱりしたー!」 男「砂まみれだな。」 55 名前: VIP無職 投稿日: 2006/11/25(土) 16 39 06.50 ID VIEhZTy00 男「おい、服脱いでこっち来い! 洗ってやるから。」 ウ「ビクッ!」 男「どうした? 冷たくないぞ。」 ウ「・・・」 男「早くしろ。あと服は洗濯機の中に入れとけ。」 ウ「みずきらい~!」 結局とっつかまえて洗った。 60 名前: VIP商人 投稿日: 2006/11/25(土) 17 10 11.11 ID VIEhZTy00 ウ「あ、あのねー・・・」 男「ん?」 ウ「あの、た、たまごでた。」 男「ええっ?」 ウ「たまご。」 男「まあ、ウズラだからな・・・ 卵か。どうしたもんかな・・・」 ウ「どうするの?」 男「暖めても孵るわけないし、捨てるのもなんだし。」 ウ「たべたい!」 男「(それしかないよな。よかった自分で言ってくれて。)」 ウ「めだまやき。」 男「倫理的に問題はないのか? ・・・無いか。」
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初出 (確認中) 収録単行本 『女の子×女の子コレクション Vol.1』(2011年、松文館) 女の子×女の子コレクション 1 (シガレットコミックス) あらすじ 寧々ちゃんと結ばれたちょこ。夏休みの2週間、寧々ちゃんの叔父さんが経営するペンションで、一緒に泊りこみのバイトをしないかと寧々ちゃんに誘われる。 Webコミックス 電子書籍として、以下のサイトで配信中。 「ebookjapan」 携帯コミックス 携帯コミックスとして、以下のサイトで配信中。 「Handyコミック」 「コミックゴンザレス」 「まんが堂」 他
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冒頭でいきなり 上田「いやー、ね、はいまっかって¥@;¥*0jkけどね(文字にできない噛み方)」 岩田「(大爆笑)」 -- 名無しさん (2012-08-26 23 04 37) 名前 コメント
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← ↑ → 124 :名無草 :2007/03/07(水) 05 22 36.40 ID zHT34biP0 俺「遠慮せずに座れよ」 友「お、おう」 男「うん」 女「え、ええ」 遠慮がちに座る三人。 俺「あー、姉貴のことは気にしないで良いから」 友「え、でも……なぁ?」 三人は顔を見合わせる。 姉「どういう意味かな?」 言いながら、俺の頬を引っ張る姉貴。 俺「やめおっえ(やめろって)」 姉貴の手をどけながら言う。 姉貴はそのまま俺の隣に座る、居座るつもりか……。 その時、ドアをノックする音が部屋に響いた。 俺「あー、どうぞ」 言うとドアが開き、大阪が入ってくる。 大阪「あ、お姉さんも居ったんですか。ちょっと待っててくださいね、湯のみもう一つ持ってきます」 言って、持っていたお盆を置いてまた出て行ってしまった。 そこには茶請けらしき団子が複数と五つの湯のみ、それに急須が載っていた。 俺「なんて言うか、姉貴より気が利く」 姉「うるさいわね」 なんて言ってるうちに大阪が戻って来た。 俺「それ、どうしたの?」 大阪「どれですか?」 俺「団子」 大阪「昨日の夜に作っておいたんです」 俺「そうなんだ」 受け答えをしながらお茶を淹れる動作はすごく綺麗だった。 125 :名無草 :2007/03/07(水) 05 23 20.48 ID zHT34biP0 大阪「どうぞ、粗茶ですが」 言って湯のみを団子の載った小皿と一緒に差し出す。 透き通った緑に色づく、湯気の立ち上るお茶。 香りも良く、なんだか甘味すら感じる。 俺「あ、美味しい」 男「ほんと、美味しい」 女「お茶淹れるの上手なんですね」 大阪「そんなことないですよ、祖母が淹れてたの思い出して淹れただけやし」 動作を思い出しながら淹れただけでこの出来なら十分に上手いじゃないか……。 友「ん、団子も美味い」 姉「“大阪”って料理上手よねー、今度教えてもらおうかな」 友「“俺”、お前も教えてもらえば?」 俺「どういう意味だよ」 友「いやだって、なぁ?」 言って意味ありげな視線を“男”に向ける“友”。 男「え?あ、うん、そうだね」 俺「なら明日の弁当俺が作るから、お前ら味見してみるか?」 友「んー、いや、遠慮しとくよ。“男”、お前に任せる」 男「え、え?でも」 俺「あー?言うだけ言って味見は人任せかよ」 友「出来たら“大阪”のが食いたいなー」 大阪「作りましょうか?」 友「マジで?」 なんて話をしてるうちに、俺と“大阪”がそれぞれ“男”と“友”の弁当を作ることになった。 147 :名無草 :2007/03/07(水) 19 50 34.92 ID zHT34biP0 そうしてるうちに“男”の門限になった。 俺「やっぱ送ろうか?」 女「大丈夫、それに自分よりか弱そうな女の子に送ってもらうのはどうかと思うし」 俺「これでも中身は男なんだけど」 友「大丈夫だって、“女”の家、“男”の家までの途中にあるんだからよ。 俺が送っていくよ」 俺「んー、なんか、すまん」 友「気にすんなって」 “友”が笑いながら言う。 友「んじゃ、また明日な」 俺「おう、またな」 男「また明日」 女「お邪魔しました」 大阪「また来てくださいね」 そうして、玄関で見送る。 ドアを閉めて、ため息を一つ。 大阪「どうしたんですか?」 俺「いや、明日の弁当の事さ。どうしようかと思って」 大阪「ああ、そんなこともありましたね」 俺「お前はどうすんの?」 参考までに聞いておこう。 大阪「そうですねぇ、今日の晩御飯作るの手伝って、あまり物使うとかが楽ですけど……」 そんな話しをしながら、自然と足は台所に向かった。 161 :名無草 :2007/03/07(水) 21 07 03.32 ID zHT34biP0 お袋「どうしたの?二人して」 俺「いや、手伝おっかなーと思ってさ」 あからさまに不審だと言う感じの目を向けるお袋。 俺「なんだよ」 お袋「なんでもないけど。明日、変なものが降るんじゃないかと思ってね」 俺「うっせ」 そうして夕飯の支度を始める。 お袋「ちょっとこれ切っておいて」 俺「はいよ」 大阪「ちょっと後ろ通りますね」 なんて、騒がしく台所で料理をする。 お袋「ほら、火を使ってる時は目を離さない」 俺「あ、そっか」 大阪「ちゃんと味見しながらが良いですよ」 俺「うん」 二人にアドバイスをもらいながらなんとか夕食の準備を終わらせる。 162 :名無草 :2007/03/07(水) 21 07 57.77 ID zHT34biP0 俺「疲れた……」 大阪「お疲れ様です」 笑いながらお茶を出してくれた。 ズズズズ……。やっぱり“大阪”の淹れたお茶は美味しい。 163 :名無草 :2007/03/07(水) 21 08 25.72 ID zHT34biP0 そんなこんなで夕食。 姉「うそ、これの中に“俺”が作ったのも混じってるの?」 俺「失敬な、入ってるよ。さぁ、俺が作ったのはどれでしょう?」 やけに豪勢な食卓。 メインが3つってどうなんだろう……。 ちなみにお袋が作ったのは野菜たっぷり酢豚。 彩り、味、栄養バランスの三拍子が揃った理想形の一つと言えるんじゃないだろうか。 なんて言うか、さすがだ。 大阪が作ったのはブリ大根。 ご飯によく合いそうだ。 で、俺が作ったのはグラタン。 一応見た目はなんとかそれらしく出来上がっている。 和洋折衷、って言うか節操がない気もする。 姉「まずはお母さんが作ったっぽいのから」 言って酢豚に箸を伸ばす、……大正解。 俺「なんで分かったの?」 姉「嫌味みたいに野菜たっぷりだったかr お袋「何か言ったかしら?」 言いながら姉貴の頬をつねる。 姉「いはい!はえあえないかあ(痛い、食べられないから)」 言ってお袋の手をどけて酢豚を食べる。 姉「うん、美味しい」 だろうねぇ 姉「次は“大阪”が作ったっぽいの」 ブリ大根に箸を伸ばす姉貴。 なんで分かるんだ……。 姉「美味しい……お米が欲しくなるね。じゃぁ最後に“俺”が作ったの」 断定してるし……。そうして俺が作ったグラタンを口に運ぶ。 俺「……で、どう?」 164 :名無草 :2007/03/07(水) 21 09 15.34 ID zHT34biP0 姉「……悔しいけど、美味しい」 俺「ほんとに?」 姉「ほんとに。私も料理の練習してみようかなー」 つい頬が緩む。 お袋「だから大丈夫だって言ったじゃない。私と“大阪”が言った事はちゃんと守ってたんだし」 ただ手際はちょっと悪かったけどね、と付け加えるお袋。 俺「し、仕方ないだろ。初めてだったんだから」 男の頃にも夜小腹が空いたときに料理の真似事はしてたけど、 今日みたいに本格的に料理をしたのは始めてだった。 食事が済んで、後片付け。 お袋は、年頃の女の子なんだから手も大事にしなさい。 とか言って台所から追い出そうとしたが、それでも食器を濯ぐのだけは手伝った。 食器を洗い終えると“大阪”が話しかけてきた。 大阪「明日のお弁当の材料買いに行きません?」 俺「そうだなー、よし、行こっか」
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833 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 31 44.37 ID lRITagc0 ぐーたっち 第二話 ドッドッドッ! 大きな音を立てて、黒色のRZが走り出す。 徐々にフェードアウトしていくその音が完全に聞こえなくなるまで待って、俺は隠れていた物陰から身体を出した。 「あの野郎……、早速人のバイクを使いやがって」 思わず、まだ微妙にむず痒さの残る左手首を包帯の上から摩りつつそう毒づいていた。 はっと思って周囲を見渡す。 休日だがもともと町の雑踏から少し離れた位置にあり、更に朝の9時半という中途半端な時間のせいか周囲に人影は少なく、幸いにも俺の呟きに気づいたものはいないらしかった。 ふう、と息をつく。 何だか、この身体になってから独り言が増えているな。 この外見で、俺の地の口調が出てしまう独り言を聞かれるのはちとまずい気がするし、俺の今のこの特殊な状況を差っ引いたって、独り言を聞かれるのを好む人間は居ないだろう。 因みに人と話す時には、と言ってもまだこうなってから数人としか話していないが、俺は鈴菜の口調で話すことにしている。 生き返り先の身体が女だと分かる前はだんだんと地を出していこうと考えてはいたが、もうそれは適わない。 俺はこれからずっと鈴菜の口調、最悪でもこの外見からよほど不自然さを与えない程度の口調を強いられるのだ。 「っくそ、あの腐れ……っと」 犬の散歩らしいおばさんが歩道を歩きながらこちらを眺めていることに気づき、慌ててまた自然に出ていた独り言を打ち切る。 「……?」 不審そうに俺を見つめるおばさんに軽くお辞儀をしてなるべく自然な所作で目的地へと歩き始めると、向こうもわざわざ見知らぬ少女に声をかける程のおせっかいさも無いのか、視線を外して通り過ぎていった。 「はぁ……」 ため息を吐いて、もう一度周囲を見渡す。 自意識過剰なのは分かっては居るが、どうしても今の俺がこれからしようとしていることを他人に見られるのに抵抗がある。 別に疚しいことをしている気持ちなんてさらさら無い。 なのに何故、かって知ったるこの辺りを歩くのにこんな指名手配犯の如くびくびくしなくてはならんのか。 どこにぶつけたらいいか判らない憤りをとりあえず心の中で腐れ死神にぶつけ、俺は目の前のアパートの敷地内に足を踏み入れた。 834 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 32 35.72 ID lRITagc0 大金市初井町、大金街道から西に少し外れた所に、俺が少し前まで住んでいたアパートはあった。 築13年、三階建て。1LDKの風呂トイレ付きで8万円は学生には結構きついランクだったが、友人の澤田と二人暮しだったため何とかなっていた。 俺が死んだために澤田はこれから家賃の全額を払わなければいけない身となったが、どうするんだろう。 あいつも実家はかなり金持ちだし仕送りも結構貰っていた筈だから、大丈夫か。それとももう少し安いところに引越しするのだろうか。 俺が死んでからもう一週間も経ってるのにまだここに住み続けている上、暢気に休日の習慣に繰り出しているところから見ても、まあ前者だと思うが。 建物に入ってすぐの場所にある集合郵便受けの前に立ち、少し息をつく。 結構疲れるな。 運動なんて学校の体育でしかしない上それだってお世辞にもまじめに授業を受けていなかった鈴菜の体力は、はっきり言って下の下だ。 たかだか一キロも離れていないこの場所まで歩いただけだってのに、なんだかデニムのパンツに包まれたふくらはぎが張ってきた気がする。 軽く舌打ちをして、俺が住んでいた302号室の郵便受けにかけられた番号錠に手を伸ばす。 かなり、いや相当にずぼらな性格をしていた澤田はしょっちゅう部屋の鍵を忘れる癖があった。 俺と一緒に行動をしていたり俺が部屋にいる時はいいんだが、何せあいつと俺はいくら大学が同じでも学部が違う。 しょっちゅう閉め出されていた。 柄でもないオートロックは澤田のずぼら対策だったんだが、そういう意味では裏目に出た。まあ、鍵をかけ忘れたままにするよりはマシだと思うけど。 そのため苦肉の策として、家を出るときに俺は合鍵を郵便受けに入れる事にしていたのだ。 正直毎度毎度あいつが家を出るときに、女相手でもないのに鍵を持ったかどうか聞くのに嫌気が差していたというのもあるんだが。 「おし、入ってるな」 さすがに俺が死んで一週間ちょっとじゃあポカはしなかったか。一月にいっぺん位の頻度だったしな。 しっかり入っていた合鍵を回収して番号錠を戻す。 そして、俺は自宅に向かうために階段を登り始めた。 一応見知らぬ女の子が大学生の男二人が住んでいた部屋に入って行くように見えるという客観的事実を承知していた俺は、誰にも見られぬようかなり慎重に足を進める。 そして、部屋の前に立つと改めて周囲を見渡し、誰も見ていないことを確認して急いで鍵を開けて部屋に飛び込んだ。 気分はまるで泥棒か何かだ。 835 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 33 23.07 ID lRITagc0 「ただいまっと」 懐かしき我が家へ一週間ぶりの帰宅だ。 「ん?」 そこで俺は違和感に気づいた。何かいやに片付いている。それが俺の物がまとめられているということにはすぐに気づいた。 澤田にこんな甲斐性はない。これは……。 「姫香か」 澤田の妹である澤田姫香。これまでもちょくちょく来ては掃除やら洗濯をしに来てくれていたあいつと血が繋がっているとは思えないほどにいい子だ。 おそらく昨日ぐらいに掃除に来たのだろう。 「澤田のやつ戦々兢々だったろうな」 あいつは自分の趣味を妹に知られないようかなり気を使っている。 ま、だからこそ、種になるわけだが。 さて。 細かい持ち物は全部部屋の隅のダンボールの中に収められていた。俺の実家にでも送るつもりだったんだろうか。 そこから、とりあえず通帳や印鑑を取り出す。一応、目的の半分はこれで果たした。 あとは……。 「お、これもあったか」 ふと、ダンボールの奥のほうに入っている物に目が留まった。 俺が愛用していた銘柄のタバコだ。 「うーん、まぁ、もう俺の体だしいいだろ」 少し考えてそう結論を出し、部屋の隅に転がっていた居酒屋の名前の入ったマッチに手を伸ばした。 一本取り出したタバコをくわえ、火をつけて、 「~~~~!! っげほっこほっけほっ!! 」 きついっ、頭が、喉が、むせてっ。 思わずじたばたしそうになるのを、火のついたタバコを持っているのを思い出して堪えたためか余計に苦しくなった。 「はぁはぁ、……あかんなこれは」 あわてて灰皿に押し付ける。 836 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 33 52.70 ID lRITagc0 さすがに、初心者にいきなりショートピースはきつかったか。 いや、この体でタバコを吸うのはやめといた方がいいって事かも知れない。あれだけ好きだったタバコが、何か根本的に好きになれない気がして来る。 かつての俺を確認する、いい手段だと思ったんだが。 「とりあえず、二十歳になるまではやめておこう」 うん。それがいい。 持っていたタバコを、ちょっと考えて、勿体無いがゴミ箱に放り込む。 無駄な時間を潰したな。そろそろ、もう一つの目的を果たしに行くとするか。 時計を見る。ここからの所要時間を考えれば、少し早いがまあ頃合だろう。 ダンボールからさらに去年の手帳とデジカメを取り出す。 携帯を取り出し、手帳のアドレス欄に書かれたメールアドレスの中からとある人物のものを探して携帯のアドレス帳に打ち込んだ。 無駄な習慣だとは思っていたが、どこで役に立つか判らないものだ。永い人生、いつか役に立つ日が来るかもしれないと思ってはいたが、まさか人生一回短く終わってから役に立つ日が来るとはね。 運命の皮肉という奴に少し笑って、立ち上がる。そろそろ行くかな。 信じてるぜ、親友。 そう心の中でつぶやいて、俺は部屋から立ち去った。 837 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 34 27.59 ID lRITagc0 190に届かんとする長身、道を歩けば思わず女性が振り返るほどの整った甘いマスク。幼少の頃から続けていた野球におかげか、黒いジャケットの上からでも分かるほど引き締まった肉体。 頭脳も大学では主席に後一歩及ばないほどに優秀で、将来の夢は弁護士。周囲の人間は、家族も友人も、彼ならきっと立派な弁護士になるだろうとの信頼を寄せている。 そんな勝ち組人生をまっしぐらに駆け抜ける青年、澤田治。 だが彼には、もう一つの顔があった。 「お、お帰りなさいませ。ご主人様」 休日の昼間。歩行者天国に多くの人がごった返す秋葉原にあるとある店舗。 そこに、彼の姿はあった。 黒のジャケットの下に黒のシャツ、首にはごついシルバーアクセ。ジーンズ生地のズボンにコンバットブーツを履き、おまけにグラサンをかけた姿はその長身もあいまって場違いな怖さを演出していた。 周りの人たちがどこか彼を避けるように歩くのは気のせいだろうか。 目の前の少女の声が少々震えているのもまた気のせい? しかし彼はそんな周りの動向を気にする様子も見せずに、口を開く。 「ただいま~」 あまりに外見からは考えられないような猫なで声に、正しい言葉を返されたはずの少女はびくりと身体を震わせた。 が、やはり彼は気にしない。気にしないことに決めている。俺の事を知らないって、この子は新人かな? 始めてみる顔だし。と、そんなことを考えていた。 「で、では、ご案内しますので、こちらにどうぞ~」 「うん、よろしく」 そう言って、前を歩く少女の後ろを、てくてくとついて行く。 その、サングラスの下に隠された顔は、例えば彼を尊敬し慕う妹が見ればショックで寝込みたくなるだろう程に、やに下がっていた。 彼を先導する少女が着ているのはメイド服。彼が少女を追って入ったその店はメイド喫茶。彼の普段のファッションとはあまりに違う格好は、じつは知り合いに見られてもすぐに気づかれないための変装だ。 端的に言って、彼、澤田治は隠れオタクだった。 それも、一週間前に死んでしまった親友のほかは家族にすらばれていなかったほどの筋金入りの。 838 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 34 59.55 ID lRITagc0 およそ二週間ぶりの来店だというのに、あまり気分が盛り上がらない。 先ほどここに来た当初は、久しぶりに目にするメイド服の少女にあれほど癒されたというのに。 その原因が分かるだけに、彼、治の内心は更に強く沈み込む。 「どうしたんですかぁ? せっかく久しぶりに来たっていうのに~」 この店の中では自分的に一番かわいいメイドであるサヤの声に、治はうん、と生返事を返しながら食後のコーヒーを口に運ぶ。 治にとって、毎週の日曜にこのメイド喫茶に来て昼食を取り、そして食後に満ち足りた気分に浸りながらメイドさんとおしゃべりをすることは殆ど習慣のようなものだった。 実家からの仕送りを潤沢に貰っている治は、バイト代の殆どを遊行費に当てることが出来る。 それを店に来るたびに惜しげもなく使い、更に去年からの常連でもあるために、彼はこうしてそれほど店が込み合っていない時間ならば可愛いメイドさんとおしゃべりを楽しむことが出来る。 その周りの客から見れば非常に羨ましい状況を自覚しつつも、彼の沈んだ心はサヤとのおしゃべりを楽しむ気持ちになれない。 「本当に~、変ですよぉ? 今日のご主人様は」 「そうかな」 「そうですっ」 それでも、サヤの優しい言葉は落ち込んだ治の心に染み渡った。 こんな優しい女の子に自分を気にしてもらって、それでもそれを無視して悲劇のヒーローを気取るのはへたれのすることだ。 少々エロゲに毒された脳内でそんなことを考える。 ここは、自分の内心を打ち明けるべきだろうか。そうして、慰めてもらうべきなんだろうか。いや、そうするべきだ。きっと、あいつだって俺がこんなうち沈んだ心のままで居るよりは早く立ち直ったほうがいいと思うはずだ。妹の姫香だって、この前うちのアパートに来たときにそんなことを言っていた。 「なあ、サヤちゃん。ちょっと、暗くなるような話をしてもいいかな」 「え? いいですけど……」 店内は、外からは見えない造りになっている。その為彼はサングラスを外していた。 例え知り合いに見つかっても、店内で出会ったならばきっと同好の士になれるだろうという思惑も働いた結果だ。 その、切れ長の瞳でサヤを見つめると、サヤは少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。 この子ならきっと自分を癒してくれる。そんな根拠のない確信が心に浮かぶ。 「その、さ。先週、俺ここに来なかったよね。それってさ、子供の頃からの、本当に餓鬼の頃からの親友が……」 839 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 35 37.83 ID lRITagc0 そしてそんな優しいメイドであるサヤに、先週起こった彼を酷く落ち込ませる要因となった事件のことを話そうとして。 「お帰りなさいませ、お嬢様! って、あの、ちょっと……!」 何が、と考える余裕も無かった。 パシャリとシャッターの切られる音と共に、フラッシュの閃光が彼の目を焼いた。 「んな……?」 一瞬、きかなくなった視界が戻る。 そこに居たのは、メイド服では無く普通の私服を着た少女。 白のブラウスに黒のショートベスト。下はスキニーデニム。髪は短すぎるほどにカットされたストレートショート。 ボーイッシュな服装で顔立ちも髪がかなり短いことも相まって中性的に見えるが普通に、いや相当に可愛い女の子だ。 ことメイド喫茶内において治にはメイド服以外の女の子に価値は見出さないが。 それよりも問題なのが一点。 彼女は右手にデジカメを持っていて、それで今、治を撮ったということだ。 自分の今の状況を思い出す。 4人用のテーブル席に座り、左手には寄り添うようにサヤが座ってる。いや、重要なのはサヤがメイド服だということだ。 そして今彼は彼にとって大事な話をする為に、サヤを正面にするように身体を左に向けている。 「…………」 例えば、治は想像したことがあった。 もし、メイド服に通いつめている自分を知り合いに見られたら? もし、写真を撮られてそれを種に脅されたら? そんな、ありえてはいけない最悪の想像が、今現実となって襲い掛かっている気がした。 「お客様っ! 困ります、店内での撮影行為等は禁止させていただいています!」 呆然とする治を尻目に、状況は動く。 少女を追うように現れたメイドが詰め寄り、捲くし立てられた少女は少し戸惑ったようだった。 「え? 撮影禁止って……、そうなの?」 「そうなんですっ。そこにきちんと書かれているでしょうっ!」 メイドが壁に張られた注意書きを指差し、それを追った少女の目が軽く見開かれる。 840 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 36 16.48 ID lRITagc0 「あー、ホントだ。悪い、知らなかった」 とはいえ言葉と裏腹に少女の態度には悪びれた様子は無い。 そのことが気に入らなかったのか、サヤもまた少女に対してきつい目をくれ始めた。 だが少女は気にせずに、 「えーと、何々? 『そのような行為をなさったお客様に関しては、ご退店頂く場合がございます』。なるほど。それじゃあ帰るよ」 そう言って、一瞬のためらいも見せずにそのまま店を出て行った。 残されたのは、少々ざわめいた店内だけ。 「な、なんだったんでしょう?」 サヤが呆けたような声を上げるが、治に分かるはずも無い。 だが、写真は撮られた。それも、治にとっては最悪の写真を。 あっさりと帰った少女の様子から見るに、初めからそのつもりで、治の写真を撮ることだけが目的でこの店に来たのだろうか。 そのことに思い当たり、すっと胸の中を恐怖心が浸透した。 いや、大丈夫だ。見たことも無い女の子だった。彼女に写真を撮られたからといって、別になんでもない。そもそも向こうだってこちらを知っているはずが無いんだから。俺がこのメイド喫茶に通いつめていることは、今は死んだ親友を除けば家族だって知らないんだぞ? だから大丈夫なはずだ。 そう、治は自分に言い聞かせるが、心は晴れない。 「それで、さっき言いかけていたお話はなんだったんですかぁ?」 いつの間にか店内のざわめきは落ち着いて、サヤもまた先ほどの出来事なんか無かったかのように治に構い始めた。 それでも、先ほど少女に撮られた写真のことが気になって、治は結局サヤに慰めてもらうことが出来なかった。 841 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 36 52.38 ID lRITagc0 ため息を吐きながら店を出る。 後ろ手に聞こえる「いってらっしゃいませ~」という声も、本当なら明日から一週間大学生活を行うための活力になる筈だというのに、一向に治の心には響かなかった。 先ほど撮られた写真の事が頭を離れない。腹が痛くなるほどの不安に押しつぶされそうになる。 癒されに来たというのに、ここに来る前よりも最悪の気分だった。 筋違いと分かっていても、メイド喫茶に恨みを抱かずに居られない。 いや、メイド喫茶に罪は無いだろうと、慌てて治は首を振る。恨むべきは間抜けな自分……でもない。そうだ、あの少女が全部いけないんじゃないか。あいつのおかげで俺はこんな気分にならなくちゃ行けなかったんだ。 不安がそのまま怒りへと摩り替わる。 いつもならこの後エロゲショップ等を冷やかしに行くのだが、さすがに今の治はそんな気にはなれなかった。 今日はもう帰ろう。そう決め、サングラスのブリッジを押し上げて荒々しく雑踏の中を歩き出そうとして、 「やっと出てきたか。何時間待たすつもりだよ?」 後ろからかけられた声に、ぎくりと足を止めた。 こわばる身体で、それでも無理やりに振り向いて、予想通りの光景に声を失う。 「こんにちは、澤田治さん」 そこに立っていたのは、先ほど店内で彼の撮られたくない写真を撮った少女。右手には先ほどと違って携帯が握られていて、左手は後ろ手に何かを隠している。そう言えば先ほども治は良く見てはいなかったが同じような体勢だった気がした。 いや、今気にするべきは少女が言った言葉だ。 「な、なんで、俺の名前……」 先ほどまでの怒りなど、あっという間に霧消した。 ただ、自分の名前を知っている少女への恐怖心が治の心を満たす。 「さっきの写真、よく撮れてましたよ? ほら」 少女が携帯を突き出す。SDカードか何かで移したのだろうか、携帯の画面には、はっきりとさっき撮られた写真が写っていた。 メイド服の少女に向かって、真剣な表情で何かを喋っている自分。 「……なんのつもりだ」 強く言ったつもりだったが、かなり情けない声になってしまう。 842 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 39 24.75 ID lRITagc0 自分を知っている少女に、こんな写真を撮られた。 絶望的な心境だ。 だが、続いて喋った少女の言葉は、更に治を絶望のどん底に落とし込むものだった。 「××××××@××.ne.jp」 「え……?」 「そこにこれ、送ったとしたらどうなるんでしょう?」 携帯を見ながら呟く。 彼女が今言ったメルアドは、治の良く知るものだった。 「あ、言い忘れてましたけど、私、姫香さんとはクラスメートなんですよね」 「う……ぁ」 自分がオタクであることを知られたくない面子の中でも、一番知られたくない妹の名前。 それが少女の口から出た時点で、治は抵抗する気力も失ってしまった。 「何が望みだ……」 吐き出すように言う。少女はその言葉を待っていたとばかりににやりと笑って、口を開いた。 「とりあえず、澤田さんのお部屋に行きましょうか?」 そう言って、隠していた左手を突き出す。そこに持っていたのは、ヘルメットだった。 「澤田さん二輪免許を取ってから先月で一年経ってますよね、なら二人乗りも問題ないですし」 「…………うぅ」 何でそんなことまで知っているのか。聞きたかったが、聞けない。 ただ頷きながら、治は自分の胸の高さまでしかない少女に、底知れぬ恐怖を感じていた。 843 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 39 59.41 ID lRITagc0 いくらなんでも、びびらせ過ぎただろうか。 がちがちに緊張した様子の澤田を見て、少しそう思う。 ま、人のバイクを勝手に使った罰だと思え。これ手に入れるために俺はどれだけバイトをしたと思っているんだ。 そう思いながら、バイクを降りてメットを脱ぐ。続いて、澤田もあからさまにぎこちなくバイクを降りた。 と思ったらこちらを見てびくりと固まった。 なんだ? 澤田の視線を追う。俺の左手、バイクに乗っていたためか少しめくれて、真新しい包帯が見えていた。 ……あー、そりゃ驚くか。 「すいません驚かして、これ、この前転んだときに切っちゃって。私ってドジなんです」 「そ、そ、そう、なん、だ……」 意図せず更にびびらせてしまった。 怖がるのも無理ないけどな。今の俺、というか鈴菜って正真正銘のメンヘラだったし。 そんな女に自分の事を色々と知られていて、更に脅されている、と。 向こうからしたら下手なホラーより怖いだろ。うん。俺でも同じ状況になったらびびるわ。 844 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 40 36.34 ID lRITagc0 「早く行きましょう。案内してくださいよ」 「わ、分かった」 がくがくと頷いて、逃げるように歩き始める。 ……さすがに可愛そうになってきたな。これ以上びびらすのは止めておこう。 黙ってついていく。 敷地に入り、階段を上り、今朝にも来た部屋へ。 「あ、あれ?」 だが、澤田は部屋の前に立ってごそごそとポケットの中をやっているだけで入ろうとしない。 というかこいつまさか。 「どうしたんですか」 「いや、部屋の鍵を忘れたみたいだ。い、いや、本当に!」 呆れの目つきが、どうやら苛立ちに見えたらしい。澤田は大仰に手を振って弁解し始めた。 「そ、そうだ。郵便受けに合鍵を入れてあるんだよ。今取ってくる!」 「待って下さい」 静かに声をかけただけで、飛び上がるようにして立ち止まる。 「これ、どうぞ」 それを冷ややかに見つめつつ、俺はポッケの中に入れっぱなしだった鍵を差し出した。 「え? これって」 「合鍵ですよ? 郵便受けに入ってました」 「ひぃいいぃい!!」 自業自得だ、馬鹿野郎。 845 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 41 05.62 ID lRITagc0 部屋に入って、澤田は少し落ち着いたようだった。 ま、こいつにとってはホームグラウンドに帰ってきたようなものだし、当然だろう。 俺にとってもホームである訳だけどな。 「飲み物は要りません。のど、かわいてないですし」 真っ先にキッチンに向かおうとした澤田を止める。 「わ、分かった。そこに座ってくれ。これ、座布団」 姫香が片付けに来たからだろうか、少し片付いているリビングに入り、受け取った座布団を敷いてその上に座る。 澤田は、正面に座った。 「それじゃ、話を聞こうか。何が望みだ?」 落ち着いたと同時に、肝も据わったらしい。もともと、脅しに屈するような奴じゃないのだ。 ここで金でも求めようものなら、断固として断るだろう。さらに、恐喝の現行犯で警察に突き出されかねない。 ま、そんなつもりさらさらないが。 「別に大した要求をするつもりじゃない。一つだけ、信じてほしい事があるだけだ」 「何だって?」 急変した口調と、おそらく予想もしていなかった言葉に、またペースを乱されたのか澤田は戸惑ったように聞き返してくる。 ごくり、と唾を飲み込む。さすがに緊張してきた。不安が、俺の心を蝕み始める。 信じてるぜ、親友。 そう心の中で呟いて、口を開く。 「俺は、芳田次郎だ」 「………………は?」 846 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 41 38.27 ID lRITagc0 何を言ってるんだ? この子は。 思わず、治はぱちくりと目を瞬かせた。 「信じろ。それが俺の要求だ。……質問なら受け付けるぜ?」 そう言って笑いながら携帯をちらつかせる少女に、治は心が急速に冷え込んでいくのを感じた。 「そうだね、じゃあ一つだけ」 「おう、どんと来い」 「帰ってくれないか?」 怒りを押し殺しながら言葉を吐き出す。彼女が女の子で無かったら、治はぶん殴るくらいしていたかも知れない。 自分の秘密を種に脅されることよりも、それを一番知られたくない妹に知られることよりも、得体の知れない少女に感じた恐怖よりも。 一週間前に死んだ、治の親友。それをこんな冗談みたいな話にされることに、治は激しい怒りを感じていた。 「……ぁ、はは、まさか、こうも完全に拒絶されるとは予想外だったな……」 治は怒りを押し殺したつもりだったが、充分に外に出ていたようだった。 戸惑ったように、怯えたように少女は呟いて、携帯を突き出す。 「そんな事言っていいのか。これが……」 「好きにしろ。妹にでも何でも送ればいい。だから早く帰ってくれ。……それとも警察を呼んだほうがいいかな?」 「…………治っ」 「気安く呼ぶな!!!」 一瞬、治を呼ぶ少女の姿に親友がダブった気がして、怒鳴りつけるような声になってしまう。 「……ひっ」 子供のころから野球をやっていて、ポジションはずっと変わらずキャッチャーだった治の声量はかなりのもので、それを真っ向からたたきつけられた少女は恐怖にか、肩を震わした。 安普請というわけではないそれなりの厚さの壁をも突き抜けるだろう大声を上げたことに、一瞬治の脳裏に近所迷惑の言葉が浮かぶが、今の彼にそれを気にする余裕は無い。 ほら見ろ。次郎なら俺とずっとバッテリーを組んできたんだ。俺の大声に驚くなんてあり得ない。 お前は、次郎じゃない。 そう自分に言い聞かせている。別に少女が次郎だと信じかけている訳ではなく。あり得ない希望に思わず縋りそうになる自分に活を入れるためだ。 だが、少女の怯えは一瞬で消えて、またふてぶてしい(次郎を思い起こさせるような)表情で口を開く。 847 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 42 14.52 ID lRITagc0 「……はは、ったく、相変わらず声でかいな。覚えてるか? キャッチャーは声張り上げなきゃつとまらないってお前少年野球のコーチに言われてさ、カラオケボックスに餓鬼の頃とは言え野郎二人で初めて行ったよな」 「もうやめてくれ!!」 「あの頃のお前ってかなり華奢だったしさ、ピッチャーの俺より声出ないのにセンターまで届くような声出せるようになるのか正直疑ってたけど、中学にあがる頃には……」 最早、少女がどうしてそんなことを知っているのかも聞く気がしない。 再びもたげた恐怖は恐慌となって治の怒りに火を注いだ。 土足で、次郎の大切な思い出にずかずかと踏み込んでくる少女。 身を焦がす怒りに突き動かされて、治は立ち上がって座っていた少女の腕を掴んだ。 「痛っ、ち、何しやが……」 「出て行け!!」 折れてしまいそうなほどの華奢な感触に一瞬戸惑い、それでも治は強引に少女を立ち上がらせてどんと押した。 軽い。190に迫る長身に、だが痩せては見えないほどに筋肉もついている治にとって、少女の体は想像以上に軽かった。 自覚せず、次郎に対する時のような力を込めてしまったのか。治ほどではないとはいえ長身でがっちりと筋肉質だった次郎とは違い、少女はほとんどリビングから放り出されるような形で吹き飛ばされ、腰から落ちる。 やりすぎたという気は起きない。 痛そうに腰をさすりながらこちらを怯えたような目で見上げる少女を、次郎はただ冷ややかに見下ろしていた。 「もう一度言う。出ていけ」 大声ではなく、だがそれゆえにぞっとするほどの冷たさがこめられた声。 少女はそれを、泣き出しそうな顔で聞いていた。 「次郎はそんな顔はしない」 続けて言う。 「どこで調べたのか知らないが、本当にいい加減にして欲しいんだ。腰が抜けたんならそのまま座っていてもいいさ。警察を呼ぶから」 そう言い放って、少女に背を向けて電話へ向かう。 848 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 42 45.98 ID lRITagc0 その時治は、ぶちりと、何かが切れるような音が聞こえた気がした。 「……おい」 そして、背中越しにかけられた、押し殺したような声。 立ち止まり、思わず振り返った。 少女の態勢は変わらない。相変わらず痛そうに腰をさすっている。 だが、表情は一変していた。先ほどの泣きそうな顔はなんだったのかと問いたくなるほどに、般若のごとく歪んでいる。 瞳は怒りに満ち満ちて、治を真っ向からにらみ付けていた。 やばい、と治は思った。あれはいつのことだったか、そう、まだ幼稚園に通っていた頃、初めて喧嘩をしたとき、彼の親友は同じ目をしていなかったか。 下らない事で怒られて、つまらないことに意地を張って、幼馴染の少年に冷たく当たってしまった時。 あの時、散々無視され蔑ろにされながらも少年は治を元気付けようとしていて、でもいい加減限界に来たのかいきなり切れ始めたのだ。 そして、 「ぐぇ……!」 治が昔を思い出している間に、唐突に立ち上がった少女は一気に治との間合いを詰めて、思いっきり治の鳩尾に拳を突きこんだ。 思ったよりも軽い。そう安堵した直後にさらにもう一発。 「がはっ!」 肺から息が搾り出される。悶絶するまもなく、痛みに俯いた治の鳩尾にさらにもう一発、アッパーの要領で下から突きこまれた。 「……!!」 それはいつかと同じだった。渡された玩具を投げ返すと、それは偶然にも少年の頭に当たって。 痛そうにうつむいた直後、いきなり飛び掛ってきて治を殴ったのだ。三発なところも、同じ。 「三倍返しだ、馬鹿野郎!!!」 そして、吐き捨てるように言い放った言葉もまた、同じだった。 849 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 43 27.22 ID lRITagc0 「……ま、さか、本当に、次郎なのか?」 「……!」 思わず蹲って、その体勢のままに見上げて言う。さっきとは逆の、見下ろす側になった少女は治の言葉に目を見張った。 泣きそうに、嬉しそうに、整った顔立ちをくしゃくしゃに歪めた。 「気づくのが――」 すぐにその顔は、怒りに染まる。色白の為か、真っ赤になっているのが治には良く分かった。 少女は、きしむ音がしそうな程に強く握りこまれた拳を振り上げ、 「――遅ぇんだよ、この馬鹿野郎が!!」 脳天に振り下ろされた。治は目から火が出たかと思った。 「~~~~~!!」 物凄く、痛い。 三倍返しといいながら四倍返しになったのも、いつかと同じだな。 そう思いながら、痛む頭をさすって立ち上がる。 「……俺たちってなんでこうなんだろ?」 死んだと思っていた親友との再会。状況だけ言葉にすればどんな感動的なシーンなんだと思うだろうが、彼らの場合はこれだ。 まだ格闘漫画とかで、死んだと思っていた友が主人公のピンチに颯爽と訪れる場面の方が感動できると治は思う。 「へ?」 苦笑いしながら言うと、少女は戸惑ったような声を上げた。 「いや、次郎と親友になった時のことを思い出してさ」 「あ、ああ。なるほど。……ぶっちゃけ俺もあの時の事思い出してた」 それを聞いて少女も笑う。そして、何かを思いついたかのようににやりと、唇の端の角度をさらに上げた。 850 : ◆c0NQxleFhE [sage]:2008/05/20(火) 20 43 54.84 ID lRITagc0 「なら、どうせなら最後までやっておくか?」 「そうだね。これが無いと俺たちって締まらないし」 少女とかがみ合わせに向かい合って、胸の前で拳を握った。少女も同じようにする。 「つーか、大の大人が泣きそうになってんじゃねえよ」 言われて、治は視界が滲んでいる事に気づいた。 「ったく、泣きそうなのはこっちだっての」 「あれ、そうなんだ。なら胸ぐらい貸すけど?」 「男の胸なんぞ勘弁こうむるね」 冗談を言い合う。いつもの、二人の調子が戻ってきていた。泣きそうに顔を歪めて笑う少女の顔は、どきどきするほどに魅力的でとても次郎とは思えなかったが、それでも目の前の少女が次郎であることに治はもう疑いを持ってはいない。 「何の記念だろうな?」 「うーん、じゃあ、次郎の生還祝いってことで」 「なるほどな、はは。よっし、俺が女だからって手加減すんじゃねえぞ?」 もちろん。そう頷きあって。 治と次郎は、思いっきり拳をぶつけ合った。 かつては初めて親友になったときに。野球を始めてからは、勝利をおさめる度に。最近では、互いに大学の合格を確認したときに。 幾度となく繰り返した“ぐーたっち”を、治と少女は、再び繰り返した。
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544 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/09(水) 23 30 42.57 ID PjQbzPoUO ミーンミンミンミンミーン… ジーワジーワジーワジーワ… ダチ「……」 ダチ父「向こうのご家族は? ダチ母「ダメ…旅行先もわからないし、家族の誰か携帯の番号も…」 ダチ父「そうか…」 ガチャ ダチ母「ダチ…」 ダチ「あ。母さん父さん…見てくれよ」 男「……」 ダチ「こんな綺麗な顔してんのに、こいつもう死んでんだぜ…」 545 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/09(水) 23 39 47.12 ID PjQbzPoUO 男「明日から3日間、俺の家族旅行だからさ、俺の家来いよ」 ダチ「え~…いいけど、変なことすんなよ?」 男「しないしない。ちょっと縄とか鞭とかアナルとか(ry」 ガッ ダチ「じゅーぶん変なことだカス!」 男「しーましぇん…」 ダチ「ま、家に行ってやるよ」 549 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/09(水) 23 50 57.27 ID PjQbzPoUO ダチ「待ち合わせは?お前の家に直行でいいのか?」 男「この前パフェ食ったろ。あそこにしようぜ」 ダチ「え?なんで?」 男「あの時、お前すっげーうまそうに食ってたから、かな」 ダチ「やっべー!30分も遅刻!!女って面倒くせーな、なんで髪のセットとか化粧とか! でも初めてのお泊まりってやつだし…最初のあれは、ムードとかあったもんじゃなかったし…」 男「おーい!」 ダチ「ごめーん!今行くからー!チッ、信号赤かよ…仕方ねぇ」 男「~~~!!」 ダチ「え?」 キキィーッ 560 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/10(木) 00 09 29.11 ID IvvTDtaAO ダチ「目立った傷もないし、骨だってどこも折れてないのに…」 ダチ母「……」 ダチ父「……」 ダチ「なのにちょっと打ちどころが悪かっただけでさ…」 ダチ母「ダチ…」 ダチ「なんで…なんで俺を突き飛ばしたりなんかしたんだよ!なんて俺をかばったんだよ!」 ダチ母「ダチ、もうあなた男の側にいて2時間以上でしょ…少し休みなさい」 ダチ「駄目だよ。こいつが目が覚めて俺がいなかったら、こいつ困るし…それにこいつがセクハラに付き合 う奴がいないとだし」 ダチ母「何言ってるの…彼は」 ダチ「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!俺はこいつと一緒がいい!一緒にいたい……」 ダチ母「馬鹿!!」 ダチ「!!」 561 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/10(木) 00 14 48.20 ID IvvTDtaAO ダチ母「男くんが死んだんだって自分で言ったんでしょ!!」 ダチ父「認めたくない気持ちはわかるが……割りきりなさい」 ダチ「……ごめん。ちょっと屋上行って風に当たってくる」 ダチ「病院でこんなこというのも不謹慎だけど…こっから落ちれば死ねるかな。 パフェ食べたかった…こんなことならもっとあいつのいうこと聞いときゃ良かった」 パサッ ダチ「うん?あれ…ノート?てかこんなとこにあったかな…」 ???「ノートに触ったな」 562 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/10(木) 00 22 48.62 ID IvvTDtaAO ダチ「!!!!」 ???「よお」 ダチ「うわああああ!!」 ???「お!なかなかの好感色」 ダチ「だ、誰だよ!突然現れて!」 デューク「俺様はデューク。そのノートの持ち主でカミサマってやつだ」 ダチ「それってデスノ…」 デューク「ただのノートじゃないぞ。セックスノートさ」 ダチ「セセセセセセックス!?」 565 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/10(木) 00 33 13.86 ID IvvTDtaAO デューク「なに?もしかしてお前処女?」 ダチ「しょしょしょ、処女ちゃうわ!じゃなくて、なんなんだよそのセ、セックスノートって!」 デューク「ん?あぁ、書いた人間の性別を自由に変えられるノートのことだせ」 ダチ「性別を変えられるって……えぇ!?まさか!」 デューク「まるで書かれたようなサプライズをどうも」 ダチ「俺の性別もこれで変えられたのか!」 デューク「そのとおり!」 ダチ「でも一回戻ったし…」 デューク「そりゃ消したら。消したら無効。でもまた書き直したけどな」 ダチ「だってデスノートじゃそんな設定…」 デューク「詳しくは読み切りの方を読んでみな!」 ダチ「じゃなくて!そのノートの持ち主がなんの用だよ!」 デューク「ちょっと耳よりな情報を持ってな」 ダチ「なんだよ情報って…」 デューク「お前の彼氏を生き返らせてやろうかなんて」 567 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/10(木) 00 43 31.97 ID IvvTDtaAO ダチ「できるのか!?そんなこと!」 デューク「俺様カミサマ、そんなの簡単だぜ」 ダチ「……でも、そんなこと」 デューク「死んだら終わりとか、そんなのフィクションの世界じゃナッシングだぜ~?」 ダチ「な、なら、あいつを…男を生き返らせてくれ!」 デューク「わかった。だが、タダじゃない」 ダチ「な…!簡単じゃないのかよ!?」 デューク「いやいや、それとこれは別。代価代価…必要っしょ?」 ダチ「うぜぇ~……そんなのフィクションな世界じゃナッシングじゃないのかよ…」 デューク「やっぱいいのね。それじゃ俺帰ります」 ダチ「……てよ…待てよ!」 デューク「俺の後ろに立つな!」 ドガッ ダチ「あべしっ!?」 デューク「いかん!スナイパーだった頃の記憶が!」 ダチ「男の奴の気持ち…なんとなくわかった」 570 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/10(木) 00 52 47.20 ID IvvTDtaAO ダチ「いてて……代価を払うから、お願いだ。あいつを、男を生き返らせてくれ!」 デューク「……いいだろう。では代価に、お前の男としての性別を貰う」 ダチ「男としての性別…?」 デューク「あぁ。今ノートにはお前の名前が書かれている。消せば性別は元に戻る。 だが、代価として男としての性別を貰うとなると…お前は二度と男には戻れない」 ダチ「……」 デューク「どうする?」 ダチ「そんなの決まってる…男としての性別なんかいらない!」 デューク「交渉成立…だな」 パチンッ バタンッ ダチ父「ダチ!男くんの、男くんの意識が戻ったぞ!」 ダチ「え……」 576 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/10(木) 01 04 34.30 ID IvvTDtaAO ダチ「デューク!……あれ?デューク?」 ダチ父「なにしてるんだ!」 ダチ「うん!今行く!」 ダチ「男!!」 男「よう」 ダチ「良かった!本当に良かったぁ…」 男「泣くなよ…いてて、なんか全身痛いな」 ダチ「当たり前だろ。お前はねられたんだから」 ダチ父「一時的に仮死状態になっていただけとは、奇跡だな」 ダチ母「あらあらうふふ、男の子から女の子になっちゃった子がいるくらいだもの。奇跡は起こるわ」 ダチ父「男の子から女の子?誰のことを言ってるんだ?」 ダチ母「そういえば…誰のことだったのかしら?」 男「じゃあ今夜はさっそく例のプレイを…」 ダチ「それは嫌だ!けど、お前どうせ動けなあだろうからさ…俺がしてやる」 男「騎乗位ktkrwwwww」 577 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/08/10(木) 01 08 03.50 ID IvvTDtaAO それから… ダチ「そういや、あのノート俺が持ちっぱなしだ」 ドンドンドンドン ダチ「はいはーい」 ガチャ 男「ダチ…」 ダチ「男じゃん、どうした?」 男「どうしよ…」 ダチ「?」 男「俺、女になっちまったあああああ!!」 ダチ「ニヤリ」 完